『督促OL 修行日記』榎本まみ著

気がやさしくて人にものを強く言えない性分なのに、クレジットカード会社のコールセンターで督促業務をすることになってしまった著者が、いかにストレスいっぱいな仕事を乗り越えていくかを書いた本です。

コールセンターといえば、お客さんに酷いことを言われようと耐えなければならない感情労働仕事の代表格。

以前、感情労働について学者さんが書いた本を読んだことがありましたが、そこでは基本的に問題提起だけで終わってしまって「じゃあどうしたらええねん!」という対策に欠けていました。その点、本書は、著者が苦労しながら一つ一つ体得していった「お客さんから怒鳴られたとき」の具体的な対処法が載っているので頼りになります。


その対処法をいくつか上げてみます。

・ゆっくり喋る。
督促のように言いづらい交渉をするときは、相手もカッカしがちなのでゆっくり喋る。
カッカしているときは自然と早口になるが、こちらがゆっくり喋ることで、相手もつられてゆっくり喋りになる。早口怒りモードを、ゆっくり平和モードに誘導する。
また、ゆっくり喋るメリットは、自信があるように聞こえることと、聞き取りやすくなること。
「電話だから相手も急いでいるだろう」と早口で喋りがちだがその必要はない。

・言うべき言葉を書いた付箋をデスク周りにベタベタ貼っておく。
相手に怒鳴られるとパニックになって何を言っていいかわからなくなる。
そんなときのために、言い返す言葉を書いた付箋を目につくところに貼っておく。
書かれたセリフを読むことに集中することで、罵声から身を守り自分を取り戻す効果もある。

・地に足をつける
著者の観察によると、クレームを起こしたりお客さんに言い負かされがちなオペレーターは、足をぶらぶらさせてたり足を組んだりしている人が多いのだとか。

以上は数ある対策の中のほんの数例だけです。
もっとご紹介したい役に立つ対策がたくさんありますので、続きはぜひ本書をお読みいただければと思います。


ちなみに、本書に載っていた「なかなか返済してくれないお客さんに、少額でもいいから返済してもらう」というのは、カード会社が時効を先のばしするための方策だと聞いたことがあります。

著者さんには好感を持っているものの、借金がかさむ社会の仕組みみたいなことに疑問を持ってしまう気持ちも一方ではあります。視点を狭めるか広げるかで正しいことも変わってきますからね。