『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』 "中の人"が語るテレ東

「モヤモヤさま〜ず2」という、お笑い芸人さま〜ずの二人が町をぶらつきながら町のヘンなモノや人に突っ込む、という番組が好きでよく見ていた時期があった。いまもたまに見てる。そのプロデューサーが書いた本だということで図書館で借りてきた。著者の伊藤P氏は番組内でたまに登場するので見たことがある。

テレビ東京と言えば、例えば何か大事件が起きて各局特番を組む中、一局だけのほほんとアニメ(あるいは通販・グルメ・旅番組)を流すような、弱小ゆえの独自路線で知られている。

この本を読んだところ、著者はこういったテレビ東京の面白さをよく承知していて、むしろそこを伸ばそうとしているそうだ。周知のこととはいえ「中の人」がそれを認める発言は聞いたことがなく、他の大きなテレビ局のような路線を目指そうとでもしていたらつまらないなと思っていたので一安心だ。

それからテレビ東京の「中の人」に聞いてみたいことと言えば、他局に番組をパクられ続けていることについてどう思っているのか。そこもちゃんと言及されていて、
「この業界では恐ろしいことに、民放四局は、テレ東の企画はパクってもいいという暗黙のルールがあります」
「テレ東の良いアイディアを、うまいこと焼き直して派手にする。はっきり言ってそんな光景は今までかなり見てきました」
「似たものを見せられる視聴者の立場に立てば、節度ってもんがある」
「『そんなことをしていたらカッコ悪いと思われますよ』とは、声を大にしていいたい」

…だそうだ。これも聞けて良かった。

テレビ東京は様々なハンデを背負っているので、他の民放のように視聴率で圧勝することはできないが、例えば何千万円の制作費を使って10%の視聴率を取るよりも、数百万円で8%の視聴率を取れれば費用対効果では圧勝できる。このように、テレビ東京贔屓の人がなんとなく評価しているテレビ東京の「弱小ゆえの勝ち方」を中の人がしっかり語ってくれた、というのがこの本の面白さではないかと思う。

この本には、サラリーマンの処世術という側面もある。
社内でのポジションの取り方や、上と下に板挟みになった中間管理職はどうすればいいのか(ちなみにこの場合は「将来役に立つ経験だから孤独を恐れるな」だそう)など。ただ、これは今現在、結果的に成功している著者が自らの体験談を語っているだけなので、果たしてどれだけ参考になるのかはわからない。

話し言葉がそのまま本になった感じなので、読書というよりは話を聞いてるようだった。

伊藤Pのモヤモヤ仕事術 (集英社新書)

伊藤Pのモヤモヤ仕事術 (集英社新書)