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自己啓発本の功罪・エスタブリッシュメント憑依

私自身は自己啓発本が好きです。たまに読むと元気になれるので「心のニンニク注射」のような感じで、半年に一度くらいのペースで自らに注入します。そして「心の持ち方を工夫して願望を実現する」ことについても、ある程度の効果を実感しています。この批判は、そんないち自己啓発本ファンからのものです。

タイトルは語呂がいいので「エスタブリッシュメント憑依」にしてみました。佐々木俊尚さんの「マイノリティ憑依」を真似しています。エスタブリッシュメント憑依とはどういうことかというと、非エリート層なのにエリート層のような思考をすることです。非支配者層が支配者の思考をする、非富裕層が富裕層の思考をする、とも言えます。

これは自己啓発本の功罪です。

お金持ちになるための方法が書かれている自己啓発本には、たいてい「お金持ちを妬むのではなく、お金持ちに親しみ、お金持ちであるかのように振る舞うことで自らもお金持ちの仲間入りができるのだ」と、説きます。

非富裕層に属する人が富裕層(往々にして支配層でもある)に心理的に同化してしまうことは、例えば各階層の利害がぶつかり合う政治的な場では自らの利益に反することになってしまいます。富の再分配において社会の支配層と一般大衆の利害は相反します。例えば、社会の富裕層は当然ながら「社会保障を削減するべき」と考えるし、非富裕層は「社会保障を手厚くするべき」と考えます。

ところが、非富裕層の人が自己啓発本的考えに無自覚に浸っていると、富裕層のこういった主張に同調してしまい、投票活動や世論形成において自分の利益を損なう行動をしてしまうのです。

ネットで見かける、非支配層なのになぜかエスタブリッシュメントに一体化した言動というのは、おそらくこの自己啓発本の教育の成果ではないかと思います。多くの人は自己啓発本など読んでないようなふりをしていますが、書店にあれだけの量の本が常時置かれているのですから、それだけ読者数は多く、その影響は広く行き渡っているはずです。

自己啓発本は「従順な愚民作りのための陰謀」論を見たことがあります。私はそこまで意識的にされてるのではなく、売れることを追求した結果である理由の方が大きいと考えていますが、結果的に支配層に非常に都合が良いことになってることはなっていますね。「貧乏になるか裕福になるかは心の持ち方次第」というのも「社会保障より自己責任」論に誘導されそうな考え方です。

ただ、生活に不安を抱えてるときに生活保護や貧困について書かれている社会問題本を読むと、本当に怖くなってしまうんですよね。そういうときにはバカっぽい自己啓発本が元気になれるというのは確かです。

そう考えると、辛い現実に直面したくないという人間心理についても考えなくてはいけなさそうです。

今現在の私の落しどころは、この記事で書いたような危険性を前提に読んだり実践したり、という感じです。もちろん、まだまだ不完全な落しどころなので、これからも考え続けていこうと思います。