『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』 不満に耽溺するのではなく解決に重きを置く

シェアハウス わたしたちが他人と住む理由

シェアハウス わたしたちが他人と住む理由

著者2人は、片方の妹さんを交えて女性同士3人で生活しているシェアハウス実践者。

彼女達が、近年急増してきたシェアハウス住人達からの聞き取り調査や、様々な形態のシェアハウスを取材・紹介している本です。

私の場合、シェアハウスというと「楽しそう」と思う前に、まずは「大変そう」という抵抗感が出てきてしまいます。知らない人とでもリビングでコーヒーカップ片手に寝起きのまま「あっははは」とトークしたりテレビのお笑い芸人を劣化させたようなコミュニケーション能力(なんだそれ…)が必須、というようなイメージがあり、本書を読みながらたまに疎外感を覚えていたりしたのですが、一方では本書を読んだことで「それは私のイメージ設定の方が非現実的だったかな」とも思えてきました。

他人と気持ちよく生活していくことで一番のポイントは、不満に耽溺するのではなく「解決」に重点を置くこと。当てこすりや怒って黙ることから、解決に重きを置きながらコミュニケーションをとり続けることにシフトすること。これが一番のポイントなんだろうな。

ただ、これは仲良し同士が共同で部屋を借りて住むタイプに有効なのかな、業者が用意するシェアハウスのように、出来上がっているところに後から入居する場合はまた違った感じになるのかな。既存のルールに従うみたいな。

本書で紹介されているシェアハウス住人がインタビューで言われていた「facebookがネット上でやっていることを、シェアハウスではリアルにやってる感じがする」というのは共感できました。私はfacebookはやってないけど、twitterでもこういうバーチャルなシェアハウスのような感覚を持ったことがあります。起きたらまずtwitterに向かって「おはよう」とか言ってそのとき思ったことをつぶやいたら誰かが適当にリアクションしてくれるというゆるいつながりが、シェアハウスのリビングに出てくる感覚とちょっと似ている感じがした。

シェアハウスというと、Ust配信したりプログラマー専用だったりというコンセプト重視のタイプが有名で、本書でもこういったおもしろいシェアハウスが多数紹介されているのですが、著者さんたちはシェアハウスがもっとふつうの生活の場の選択肢として市民権を得ていったらいいのではないかと考えているようでした。
例えば、各世帯で個々の居住空間を持ちながら共同のリビングがあったり、まめに住人同士で集まる機会を持つという、昔の長屋や団地と似たような形態のところもありました。違うのは、生き方のコンセプトが昔よりもはっきりとあってそこに共鳴した住人が集まっているということかな。地縁や血縁でなんとなく固まって暮らしてたのが、もう少し理念みたいなところで共感した人たちが集まるような。昔のスタイルの団地や長屋的なもの、それが腐って皆が嫌になって放棄したものを、あらてめてもう一度意識的に行う感じがしました。