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『肉体不平等 人はなぜ美しくなりたいのか』

肉体不平等―ひとはなぜ美しくなりたいのか? (平凡社新書)

肉体不平等―ひとはなぜ美しくなりたいのか? (平凡社新書)

人間の構造上、自分の容貌を直に見ることはできない。鏡やレンズを通して間接的に見ることだけだ。そして、その間接的にインプットした自分像と他者からの評価をすり合わせて自分のボディイメージは作られていく。自分の見た目というのはこのようにバーチャルなものなのだ。

自明のことだと思われている「きれい」「かっこいい」が、本書を読むことでいったん解体されて再構築される。自分から引き剥がすことで距離をもって眺めることができ、フレッシュな気持ちで自分の身体に取り組むことができる。

「なるほど」と思ったのは、一つはブスで悩んでいる女性に対してフェミニズムの思想は効果がないということ。思い当たる。間接的な効果はあるが、いま悩んでいる人にフェミニズムの思想を直接ぶつけても、良いアドバイスになるとは思えない。

もう一つは男性の外見コンプレックス。1980年代から「見られる存在」としては男女平等化が進行している。男性も外見のコンプレックスで悩むが「男性が外見を気にするなんて」という社会的抑圧がある。さらに「見られる性」としてのキャリアが浅いので、外見を良くするノウハウが女性に比べて乏しい。

「顔じゃなくて中身だ」という矛盾の中で苦しんでいるのはもしかしたら男性のほうなのかもしれない。醜形恐怖も男性のほうが発症率が高いそうだ。

本書にあった身体コンプレックスと付き合う方法が役に立ちそうだったのでメモをしておく。
1)身体コンプレックスがあることを自覚する。
2)理想の身体イメージと今の自分を比較する。自撮りした写真と理想的と思うイメージの写真(タレントなど)を比較する。理想と思う人の容貌のどこに惹かれるのか、あまりに非現実的な理想を掲げていることに気づいたら、もっと現実的な比較の対象を見つけて軌道修正する。
3)現実的に自分を良く見せる、または理想に近づけるメイクやファッションの研究。
4)メイクやファッションを自分に合わせて微調整する。
5)自分の顔と身体を見つめる 
6)スポーツで身体を変える。鍛えなおせという意味ではなく、スポーツを通して「見られる身体」ではなく「動かす身体」、装飾的な身体から機能的な身体へと意識をシフトしようということ。

ファッション誌や流行の情報は不特定多数に向けている。そこから情報を拾いつつも、あくまで自分にどう生かすか、自分を中心にして考える。既存のメイクやファッションを身に着けるのではなく、自分を生かすためにメイクやファッションを合わせる。

著者は顔に大きなアザを持つ当事者で、そういった容貌の不自由さや苦しみについての多くの著書がある。その点について本書の中では特に触れていない。そこに著者のジャーナリストとしての矜持を感じた。