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『プリズン・ガール アメリカ女子刑務所での22ヶ月』

 

プリズン・ガール―アメリカ女子刑務所での22か月

プリズン・ガール―アメリカ女子刑務所での22か月

 

 面白かったー。

…なんだか刑務所体験を面白かったというのも申し訳ない話ですが、「自分ではまずしない・したくないことを他の方の体験談で追体験する」というのがノンフィクションの醍醐味ならば、本書はその最高峰と言えるのではないでしょうか。刑務所って絶対入りたくないけど中はどうなってるのかって興味はあるでしょ?しかもアメリカだなんて。また、著者の有村さんの人柄とか感覚がちょうど良いというのかな、尖がった感じじゃなくて、すごく共感できる。

有村さんが刑務所に入ることになったのは、恋人になった男性がロシアンマフィアで麻薬の売買をしていて、その共犯者だろうということで逮捕・収監されてしまったため。ちなみにアメリカのマフィアというのは日本のやくざのように「いかにも」な見た目じゃなく、見た目にはエリートビジネスマンと変わらなかったりするんだって。だからまともな人と付き合っていたつもりが後からマフィアだと知るケースが多々あるらしい。有村さんの刑務所仲間も、こういった恋人や夫がドラッグディーラーだったために共犯とみなされて収監されている女性がたくさんいた。末端のドラッグディーラーだったらそれほどの罪にはならないんだけど、マフィアのように組織に入ってる人の共謀者とみなされると罪が重くなるそう。

刑務所体験を読んだ感想は、なんか女子高っぽかった。これは収監されたところが連邦刑務所という自由で規則の緩いところだったことと、有村さんの「どうせなら良い面を見よう」という意識に拠るところが大きいのかもしれないけど、日本の刑務所の感じ(こちらも私は入ったことないから聞いたり読んだりした話だけど)と比べると日本の高校程度の自由さはあるように思った。例えば化粧とかヘアスタイルはある程度自由にやっていいとか、仕事は割り振られるけど用がなかったらずっと寝ててもいいとか、習い事があるとか、勝手に行事を企画してやってもいいとか、クリスマスには各部屋対抗飾り付けコンテストがあるとか。でも人間関係からは逃れられないみたいな。

刑務所はアメリカ下層社会の縮図と言ってもいいのかもしれない。なんとなく人種ごとにグループになっていて、そこでは黒人が最大多数、次にヒスパニック系、そしてアジア人、白人と続く。黒人がマジョリティなので、ここでは白人が逆にブレイズ(細い三つあみたくさん作るヘアスタイル)にしたり黒人カルチャーのファッションをしようとするんだって。

あとは同性愛系の話だよね、刑務所生活で実際どうなのと気になるところは。男役の人が度々現れてカップルになったり女性をはべらせたりしてるらしいんだけど、この男役の人たちの話も面白かった。もう見た目や声から男性にしか見えない人がけっこういて、当然もてるらしい。でも彼女たちのジェントルマンな感じが良かった。「ピンプ(英語のスラングで女たらしという意味なんだって。女子刑務所では男役の意味)は言葉で女をとろけさせてなんぼ」と書いてあるように、主に振る舞いとか言葉で魅力を発揮するらしい。肉体関係系のことは触れてなかった。ただ、カップルになるのは黙認されていても肉体関係には厳しくてキスが見つかっただけでも懲罰を受けると書いてあった。

看守には若くてかっこいい男性もいて、有村さんはその人に視線を送ったりしゃべったりするのが楽しみだったんだって。日本の刑務所は異性の刑務官っているのかな。看守の中には「昔は明るくて感じのいい人だったのに今では常に何かにおびえているようになってしまった」人がいて、その人はイラク戦争から帰ってきて以来そうなってしまったそう。

有村さんが二年入ってた刑務所は二人部屋でそこそこ居心地の良いところだったんだけど、強制送還の手続き待ちで入る刑務所はまさに堤未果さんで紹介されてるような大部屋に二段ベッドが所狭しと詰め込まれてるタイプだった。州刑務所か連邦刑務所かで居心地が格段に違うらしい。日本で言うと自治体運営か国の運営かということかな。

後半は有村さんと韓国系アメリカ人のキャティの友情物語の要素も入ってきて、そちらもすごく良かったです。