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『ラテンアメリカの教育戦略 急成長する新興国との比較』 日本の存在感の無さ… 

 

ラテンアメリカの教育戦略

ラテンアメリカの教育戦略

 

 ラテンアメリカ諸国の教育と経済の遅れをなんとかすべく、著者のオッペンハイマー氏が、フィンランドシンガポール、インド、中国、韓国、イスラエルといった教育に力を入れて経済的にも成功した国を取材し、その教訓をラテンアメリカにどう生かすかを述べた本です。(それらの国についてマズいところは教訓にならないとちゃんと指摘しています)

ラテンアメリカについては、以前『反米大陸―中南米がアメリカにつきつけるNO!』という本にあった「ラテンアメリカ諸国はかつてアメリカに経済的な植民地とされ、国の富や労働力を収奪されるという辛酸を舐めてきたので2000年以降は反米左派政権ががんばっている…」というイメージがありました。故チャベス大統領がブッシュを批判しているシーンとかね。

こちらの本には、その現在のラテンアメリカのマイナス面が取り上げられています。

現在の学術や経済の枠組みはアメリカが作っているものがほとんどなので、アメリカに背を向けるということは、そこから孤立してしまうことにもなります。で、それよりもすごいものを確立できればいいんだけれど、ラテンアメリカ諸国の学術や経済、先端技術はまだそこまでいっていません。国際学力調査ではたいてい下位(そもそもそういう調査に参加するのを嫌がるので不参加することが多い)。理工学系の学生よりも人文社会学系の学生が圧倒的に多いので、工業的な技術がなかなか発展しない(ちなみに、理系の大学生が少ないのは、中等教育での教え方がマズいので生徒たちは理系科目に苦手意識をもってしまうんだって)。ラテンアメリカは資源の豊富な国が多いので、そこに胡坐をかいてしまっている。政府は教育が遅れているという現状を見ようとせず、理系に力を入れるよりも独立の英雄を掘り起こすようなイデオロギー的歴史教育に力を入れている。そんな状況でもラテンアメリカでは「我が国の教育は世界一!」「我が国の科学者は海外で大成功!」と内輪で盛り上がり、著者いわく幻想の中で生きているそう。

これを読んでいて何が悲しいって、日本の存在感の無さ。というかむしろ著者が危機感を抱きまくっているラテンアメリカ諸国に近づいているのではと思うところもなきにしもあらず…(「江戸しぐさ」みたいなインチキ歴史・道徳教育とか「日本すごい」報道の過熱ぶりとか)。あ、どんなに内向きになって後退しても米国追従はやめないというのは違いますけれどね。

確かに「日本は新興国ではなく、既に成功しているんだから中国やインドとは違うんだ」ということも言えるかもしれないけれど、似たようなポジションにありそうな米国やヨーロッパの国は、連携し手本にすべき先進国として本書にたびたび登場しています。日本は大学で特許をたくさん取っているという例で少し登場するものの、日本人の私が期待していたほどには取り上げられていなかったのが残念…というかそれこそ本書が言うように現状を謙虚に受け止めなければいけないんでしょうね。