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『ヨガを科学する―その効用と危険に迫る科学的アプローチ』 できないポーズにコンプレックスを持たなくていいんだと思えた

 

ヨガを科学する―その効用と危険に迫る科学的アプローチ

ヨガを科学する―その効用と危険に迫る科学的アプローチ

 

 

19世紀頃、英国の支配下にあったインドでのヨガは、乞食が人に奇術を見せて投げ銭してもらうもの(もちろんその奇術がヨガ)、または一部のいっちゃった人たちが性的なパワーを高めるために行ういかがわしいものだった。それが、英国支配への抵抗が高まり、ヒンドゥーナショナリズムが盛り上がる中で、ヨガを見直そうという人が現れる。彼はヨガを怪しげなものから陽の当たる場所へと引き上げた功労者なんだけども、あまり知られていなかった。本書の著者であるブロード氏の執念で探し当てていく感じ。この探す過程もなかなかの読みどころ。

で、その怪しげなヨガに科学の光を当てた人はティルマライ・クリシュナマチャーリヤという。彼が当時やろうとしたことは、あくまで科学な手法を通じてヨガを再評価するものだった。ただ、「やったー!やっぱりヨガには科学的な裏づけがあるのだ!」という結果が得られても、なんせ昔の科学だから、後の研究でまた覆されちゃったりするんだよね。というわけでまだまだ発展途上なわけだけど、偉大な舵を切ったのは確か。

で、そのクリシュナマチャーリヤさんたちがインドのどこかにヨガの研究所を作るんだな。その研究所は女性に門戸を開いていたのも偉大だった。なんせ100年以上も昔の男女差別の激しい時代だったからね。いまやヨガ愛好家の圧倒的多数は女性だけど、当時はもちろん男性がするものだった。

その研究所で学んでいたインドラ・デヴィという女性がハリウッドに渡って、グレタ・ガルボマリリン・モンローといったハリウッドスターにヨガを教えるようになる。これなんかも、いまのハリウッドセレブがヨガを習いだすことのはしりと見ていいのかな。インドラ・デヴィさんは名前はインド人ぽいけど実はロシア人で、20世紀初頭のことだから、多分、彼女が白人だということも米国白人社会で受け入れられた要因なんだろうなあ。

で、まあこれでヨガの現在へ至る方向性がついた初期の感じは伝わったかな?では、ヨガ愛好家として、ヨガは果たして効くのかどうかという話。

著者のウィリアム・J.ブロードさんもヨガ愛好家。本書に載っていた写真は年齢よりずっと若く見えてかっこいいので、「おおっ、これはまさにヨガの成果ではっ」とついヨガ寄りに見てしまいます。

科学的にヨガは効くかどうか。結果から言うと効きます。

ヨガの効果は色々なところで実験がされてるんだけど、結局は「ヨガ」というビジネス的にも政治的にも何のうまみもないものだからね。要するに大規模な実験の費用を出してくれるスポンサーがつくわけじゃないのね。だから、実験の多くは小規模なものが散発的に行われている。そして、それらを集めてみて、まあまあ、科学的にも効果あると言えるんじゃないの?という感じ。

一つはっきりしているのは、心拍数をあげること、代謝を良くしたり痩せたりということへの直接的な効果は乏しい。ジョギングや水泳のような有酸素運動的な効果はない。よっぽどヨガのハードな行法をして、まあまあ数値が上がるかな程度。これらは素直に有酸素運動した方がいい。

けれども、有酸素運動効果がないなんて本当に些細なことで、それ以上に有り余る恩恵がある。まず気分が良くなってウツが治る。これは実験でもはっきり出てた。でもこれはヨガをしていればけっこう実感できますよね。それからなぜか性的能力が上がるという結果がよく出てた。これはもともとヨガってそういうものだったんだって。現代ヨガより露骨に性的な力にフォーカスしていたそう。ただ、なにがどうなって性的能力が上がるのか、そもそも性的能力とは何かというのは読んでていまいちわからんかった。ポーズによって下半身に刺激が加わることでそうなるのかな。あと、確かにジムのヨガクラスに行ってたときによく「会陰がどうの」と下半身のこと言ってたな。あとは、クンダリーニのことも言及してた。まあ、こんなの実験しようがないんだけど、脳波をとることである程度の状態はわかったそう。それと創造的なインスピレーション。

それから、ヨガの危険性。これは大事かもしれません。やっぱり無理なポーズで怪我したり障害を負ったりする人は実際にいるので、やりづらいポーズを無理やりやろうとするのは危険らしい。頭立ち、鋤のポーズは頚椎を怪我しやすいので要注意。ただ、これを読んでできないポーズへのコンプレックスが解消した。「いつか頭立ちをやりたい、というかものすごい効果らしいからやらねば」と思ってたけど、まあやらなくていいかと思えてきた(笑)