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『安井かずみがいた時代』

 

安井かずみがいた時代 (集英社文庫)

安井かずみがいた時代 (集英社文庫)

 

 安井かずみと言えば、昔エッセイを何冊か読んだ。覚えているのは、「若いころマスカラが大好きで沢山つけてたら睫毛が抜けてきたので今はマスカラをやめてアイシャドウだけぬってる」と「女は30代からが本番で、20代の男は30代の女に憧れるものだ」というところ。

安井かずみとその時代』を読むと、この発言はこういうことだったのかーとわかる。まずマスカラの件だと、若い頃の写真を見るとほんとにアイメイクが濃いwあと「若い男は30代の女に憧れるものというのは、年下の夫である加藤和彦さんと安井さん本人のことを言ってるんだなあと。

この本は、安井かずみさんと関わりのあった人から当時の思い出やエピソードを聞き書きしたもの。1章ごとにいろいろな人が登場して思い出を語っているので、安井さん像がいろんな角度から照らされる。とはいえ、安井さんの人生の流れという基本的な事実は変わらないので、加藤和彦さんと結婚する前と後で180度キャラが変わった件とか、安井さんの死後すぐに加藤和彦さんがオペラ歌手の中丸三千繪さんと結婚して安井さんの関係者から怒りをかった件とか、毎回出てくるから覚えちゃったw

私が読んでいたエッセイの安井さんは、まさに加藤和彦さんと結婚してからの後期の方で、本に載っていたご本人の写真を見ると「日焼け系お金持ちマダム」みたいな感じだったので、 「めちゃくちゃセンスがよかった」とか「フランス映画に出てくる人みたいにかっこよかった」という 若いころの逸話 があまりピンとこなかった。けどこちらの本で当時のより詳細なエピソードを聞いたり、写真を見たら納得しました。でもほんっとに結婚前と後のスタイル(服とかメークとかヘアスタイル)がまるっきり違う。 結婚前と後では交友関係もガラッと変わってしまって、安井かずみさんの親友ということでよく名前の出てくる加賀まりこさんとコシノジュンコさんは結婚前の付き合いで、結婚後は疎遠に。逆に結婚後の社交仲間は、大宅映子さんとか玉村豊男さん。結婚前の安井さんと仲が良かった人たちは、結婚後の変貌ぶりに違和感を覚えたという話がよく出てくる。

ウーマンリヴを体現するような自由でとんがった女性から、肩の力の抜けたおしゃれで余裕のある生活をする女性へというのは、時代の流れともリンクしていて、安井さんと加藤和彦さんとのカップルは、デパートの広告ポスターに使われたりと、ある種、アイコン的な存在だったそう。でも、理想の夫婦と思われていた二人も、けっこう無理してたんじゃないかとか、周囲からのそういう証言が出てくるんだよね。この点については、吉田拓郎さんが一番辛辣だった。

安井さんと加藤和彦さんには揺るぎない美学があるんだけど、「人から見て素敵だと思われるカップルでなければならない」とか、「妻は夫をたてなばならない」とか、「海外でも通用する日本人でなければならない」とか、その美学というか美意識でがんじがらめになっているところはすごくありそうだった。そのあたりは周囲の人たちからの話でもよく出てくる。