『アルビノを生きる』

 

アルビノを生きる

アルビノを生きる

 

本書は著者の川名紀美さんが、様々なアルビノの人にインタビューをしたもの。なんだか良質な群像劇を味わったような読後感。日本全国、様々な年代のアルビノの人の話が紹介されつつ、それぞれの人たちが知り合いだったり、影響を受けていたりと、微妙に互いが重なり合っています。

そして、アルビノの人たちが重なりあう結束点みたいになってる人がいるんですよね。一人は冒頭に登場する石井更幸さん。それから石井さんがオフ会を積極的に開いていくきっかけとなった「アルビノのページ」というホームページを作った宮元浩子さん。アルビノの人たちが交流できる場を作りたいと、アルビノ・ドーナツの会を主催している薮本舞さん。彼らをハブにしながら、全国に散らばっていたアルビノの人たちが出会い、つながっていく様子は読んでいてワクワクします。

ちなみにアルビノというのは、生まれつきメラニン色素が足りないという、1~2万人に1人の割合で現れる遺伝性の疾患です。メラニン色素の欠乏から紫外線に弱く、また、視覚障害を伴うことが多いそうです。

そういう身体的な不自由に加え、医療機関や学習機関の無理解で適切な治療やサポートを受けられなかったり、差別に直面することもある。そうした中で、どう折り合いをつけたり乗り切って生きるか。それぞれの人の体験を読み出したら止まらないほどでした。

アルビノの子を親はどう育て見守っていくか。今の私としては、そういった親の側からの体験談を特に熱心に読みました。一番私の中に残ったのは相羽大輔さんのお母さん久枝さんが、小学生の時に上履きを隠される意地悪をされた大輔さんに「なくなったら探さなくてもいい。上履きくらい、いくらでも買ってあげる」と毅然として言ったというところ。なんで印象に残ったんだろ…。私が子供の頃に同じことがあったら、まず親に隠しただろうし、親に知られたところで私に味方してくれるわけでもない、むしろ私を責めるような対応をしてきたんじゃないかと思うんだよね。そんな中に、こういう自分のことを全面的に受け入れてくれる態度を見せてくれたらすごく心強かったんじゃないかなと思って。

あと、仏教に関心のある私としては、仙台にある「みんなの寺」の存在を知ることができてよかった!巷によくある金満似非仏教ではない、本来の仏教に即した、誰でも自由に立ち寄れるお寺。そのお寺を作った住職がアルビノだということで、本書に登場するのですが、仏教やお寺への考え方にとても共感して、このお寺に行きたい!!と思いました。檀家ゼロから始めて、巷のお寺がやるように、葬儀、法名、法事に高額なお金を請求したりせず、金銭的な運営という面では不安な船出だったものの、それが多くの人に喜ばれ、檀家も収入も逆にどんどん増えていったというのが痛快でした。

締めがアルビノと関係ない話になってしまいましたが、そういう様々な分野の人たちの生活や生き方が垣間見れるという面白さも本書にはあるんですよね。