『たまたまザイールまたコンゴ』

たまたまザイール、またコンゴ

分厚い本だったけど、面白くって半日くらいで読んじゃった。内容はタイトルがよく説明してる。前半、後半に分かれていて、前半が著者の田中真知さんが1991年のときに奥様とコンゴ…当時の国名はザイールだね、そこを旅したこと。夫婦二人でザイール河を丸木舟で下ります。後半は2012年に元ザイール、現コンゴ民主共和国で、コンゴ川を再び丸木舟で下ります。今度のパートナーは現地で知り合ったシンゴ君という若者、そしてオギーとサレという地元の人達です。

前半と後半の田中さんの変貌ぶりというか成長がすごい。大人になってる!って、年下の私が言うのも失礼なのですが。前半はね、つい奥様目線で読んじゃったので「なんだこのクソ夫!気が進まないっつってんのにこんな酷いとこ連れて来やがって!しかも丸木舟では『ちゃんと漕げ』なんて怒鳴ってちっせえ男だな!船降りたら離婚だ離婚だ!!」という感想。

あと前半は、丸木舟の旅よりも、その前のオナトラ船の話が強烈過ぎて忘れられない。6隻の船をいかだのようにつないだ全長200メートルほどの巨大な船の複合体で、そこに人と荷物とサルやらイモムシやらヤギやらワニやらといった生き物(食べ物)がぎっしり満載されている。オナトラ船を見た奥様が思わず「これに乗るの…」と溜息をついたとあったけど、いやあ私もきっと同じこと言うわ。この中で数日間か過ごすんだけどこれがまたトイレも食事も睡眠も困難を極める超ハードな旅。ちょっと書くのが気が引けるけど、ハイパー不潔で超混雑で体を休める場所を探すのも大変で、乗ってるアフリカ人にはしょっちゅう囃し立てられるという…。

で、後半を読むと、田中さんのものの見方とか目線がうって変わって大人になってるの。物事の捉え方も深い。オギーという伝説のガイドとのふれあいも良かった。

田中さんと、シンゴ君とで、現地の人と接するときの考え方が違うというのも考えさせられた。田中さんと打ち解けたオギー(本書に出てくる現地の人の中で珍しく知的で思慮深い人柄)が、初めて自分の父親が亡くなった時の話をするんだけど、そこにシンゴ君が「田中さん、同情しちゃダメですよ」と割って入ってくる。読者の私も田中さんと同じく「えええ、そんな非情な」と思ったし、オギーも自分の話をそんなふうに受け止められたのかとショックを受けるんだけど、シンゴ君はシンゴ君で、コンゴで長らくNGO活動をしてきたし、田中さん帰国後もオギーと活動していたので、シンゴ君の方が正しかったのかな…とか、いろいろと考えさせられました。

前半のザイール編、後半のコンゴ編ともども超ハードな旅で、両方とも旅の終わりには感慨みたいなものはゼロで、それよりも「シャワー浴びたい!清潔なふとんで寝たい!~が食べたい!」という気持ちでいっぱいなんだそうです。すごくわかるw読者としてもそんな気持ちを一緒におっかけているので、もし改訂版を出す際には、その後のめちゃくちゃ気持ちいいシャワーや睡眠、食事を堪能している場面をぜひぜひ加筆して下さいませ。