『ビューティ・ジャンキー-美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち』

ビューティ・ジャンキー-美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち

ニューヨーク・タイムズの記者が書いた本。名前からして男性かと思ったら女性なんだって。というわけで、著者自身もまるっきり客観的に突き放して書いているわけではなく、「当事者」でもあるんだよね。まあ、今日び男性だからといって容姿の問題に全く無関係ではないんだけど、やっぱり女性のほうが囚われてしまう問題だし、まだまだそういう社会構造だからね。

で、著者のアレックスがどう当事者かというと、自らもボトックスとかピーリングとかいろいろやるのよ。当初は取材するだけだったんだけど、そのうちに「これ、いいかも」「これくらいなら…メスをいれるわけじゃないんだし」と、どんどん深入りしていくの。で、とうとう「下半身の脂肪吸引」「まぶたのたるみを取る」という、メスをいれる領域に、控えめながらも進出していくのね。

ただ、整形の何が悪いの?って言ったらそうはっきりとしたことは言えないよね。「親からもらった体にメスを…」なんて言い方もピンと来ないし。ただ、こちらに書いてあって「あー、こういう感じわかる」と思ったのは、整形の世界に足を踏み入れると、「次はどこを整形しなければいけないか」という目で自分の体を点検しだす、自分の体に対して肯定するというよりはダメ出しモードになる、ということなんだな。

アレックスが整形中毒から目が覚めたのは、大事な友人の葬儀の合間に、予約していた唇のボトックスに行って想定外に唇が大腫れしてしまって、葬儀に出られなくなってしまったこと。なんせ中毒だから、優先順位みたいなまともな判断ができなくなってしまうんだよね。それから「体はコントロールしきれない」「整形よりも加齢の力の方が偉大だ」ということを思い知らされたこと。

私自身はこのように著者のアレックス自身の体験談が一番印象に残ったので、そこ中心の感想になっているけど、その他の、アメリカの美容整形外科界の業界事情とかも面白かった。