『「モザイク一家」の国境なき人生』

 

 

国、民族、宗教においてとても複雑な背景を持つ男性と結婚した日本人女性が、夫とその両親のことを書いている本。

まずは著者の長坂さんのご主人。アメリカ国籍なんだけど生まれ育ったのはスイス。でも学校生活の多くはアメリカンスクールで受けたし両親も移民なので「スイスが故郷」という感じでもない。

ご主人のお母さんはアメリカ人でモルモン教徒。トルコで英語教師をしていたところお父さんと出会い、スイスに移住。

ご主人のお父さんはイラク出身のユダヤ人。意外な取り合わせだけど、昔のイラクイスラム教徒だけではなく、ユダヤ教徒キリスト教徒が共存していたんだそう。政治情勢の激しい変化でイラクユダヤ人は国外(主にイスラエル)に避難。以降、いろいろあってスイスに住むことに。

たまたまこの家の嫁となった著者が出版の仕事をされていたので、読者である私はこのご主人やお父さん、お母さんのドラマティックな人生を知ることができたんだなあ(特にお父さんが激動の人生)。お父さんとお母さんの人生を紹介しているところについては、それ自体が一つの読み応えある物語みたい。お父さんは本書の隠れ主役、この本の中心人物だ。

異文化が組み合わさった暮らしがどういうものか、そういう環境での言葉の習得や、インターナショナルスクールの状況といった情報収集としても読めるし、一方では壮大で感動的な家族の物語としても読める。