『味憶めぐり―伝えたい本寸法の味』

 

味憶めぐり―伝えたい本寸法の味

味憶めぐり―伝えたい本寸法の味

 

 高知で生まれ、中学時代に上京し、高校を卒業後は都内でサラリーマン生活を送っていた著者の味の記憶巡り。主に昭和の東京の名店、そして高知と京都の食文化も堪能できます。料理を作るときに「よーし、美味しい料理を作るぞ!」と気合を入れる様を「腕をふるって」と言いますが、本書の場合は「筆をふるって」というのかな。小説家の著者が、読者に美味しさを追体験してもらおうという気合のこもった文章です。当然ながら、いちいち食べたくなります。

私はこれを読んでいる途中に餃子ライスが食べたくなって、夕食に餃子を作り、餃子を食べながら「天龍(銀座)餃子ライス」のページを読むという、ちょっとお行儀の悪い愉しみに耽ってしまいました。そこのところを少々引用

「タレの池に泳がせ、酢・醤油・ラー油を餃子の皮にまとわりつかせた。そして上部三分の一のあたりを強く挟んで口に運んだ。

皮のもっちりとした感じに、舌が大喜びをした。前歯で噛むと、皮が割れた。

餡は肉がたっぷりで、肉汁が口にこぼれ出た。その汁とタレの三味がからみ合った」