『モロッコ流謫』四方田犬彦
にわか四方田犬彦ファンになり、見つけると読んでます。
私には本書を論じたエッセイをかけるほどの教養はないので、バカっぽい感想を書きつけるって感じでいい?まあ、このブログは基本的に自分の個人的なメモや日記みたいな感じだしね。
というわけで、こちらの本は、モロッコに流れてきた人たちを紹介しつつ論じるというもの。その中には四方田さんご本人も含まれているので、最初読み始めの頃は「これは四方田さんのモロッコ旅行記なのかな」と思ってた。そうしたら、その旅はどうやらポール・ボウルズという、モロッコにとどまり続けた伝説的な作家の作品の翻訳のためらしいということがわかってくる。
ポール・ボウルズは、あの有名な映画『シェルタリング・スカイ』の原作者で、50年代位にモロッコに来てこちらにずっと隠遁していたらしい。で、この人と妻のジェイン・ボウルズが本書の柱みたいな存在。彼を中心に、ジャン・ジュネやカミュ、モロッコ人作家のモハメッド・ショックリーたちが紹介され、また、彼らとは別に三島由紀夫の弟の平岡千之さんと邂逅する話もあってね、それも面白かった。
それから石川三四郎という戦前に活躍したアナーキストの話ね。彼がモロッコに滞在して、突如「日本人とベルベル人には血縁があってルーツを共有している!古事記と古代バビロニア神話、ヘブライ神話が類似している!高天原は実はカッパドキアで古代の出雲はペルシャ湾岸だったのだ!」と、おまえは出口王仁三郎かという誇大妄想へ突き動かされてしまう話も面白かった。四方田さんは、石川さんがこうなってしまったのは「故国から無限に遠ざかってしまったという寄る辺ない意識と、これまで世界の中心にあったはずの日本が文明の最も周縁に位置しているという冷静な認識とが、彼をしてファナティックな古代回帰へと向かわせた」のではないかと言ってた。この病気にかかっている人たくさんいるよね。なんなのw
四方田さんによれば、モロッコにいると、西洋から言う東洋というのはあくまでこの中近東のイスラム世界のことで、日本とか中国はその向こうというか、とりあえずそのメインの世界からは遠く離れた、まさに周縁地帯みたいな認識だと実感するそう。
こちらの本を読んでいると、日本の日常をつかの間忘れてしまうというか、モロッコのクラシックなホテルとか、騒がしい市場に身をおいてるような気分になれてよかったよ。この感覚をもっと味わいたくて、ネットでもモロッコに住んでる人のブログとかいろいろ検索して読み漁っちゃった。
あと、やっぱり町を歩いてるとガイドの売り込みとか客引きとかで、落ち着いて歩けないらしいw これはいろんな旅行記にあったから、やっぱりそうなんだとw