モーパッサン『女の一生』

 ネタバレしているので、話の結末を知りたくない人は読まないで下さい。

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

 

いやー、思いの外面白かった!

この前読んだ『エマ』とかと時代はかぶるのかな。エマはイギリス、こちらはフランスの話なんだけど、貴族の生活ぶりとか使用人たちとの関係性とか色々と似てた。あと映画の画像を見ると女性陣の服装がエンパイアドレスというのかな、同じような感じだった(念のため検索して確かめようと”エンパイアドレス”で検索してみたら、ウェディングドレスばっかりでてきた)。

最初の方は幸せいっぱいな主人公のジャンヌなんだけど、中盤で雲行きが怪しくなって、エンディングに進むに連れてダメ人間っぷりに拍車が掛かっていくのねw色々と突っ込みどころが多くて、夫ジュリアンの浮気とかもうジャンヌが気づくまでに、いわゆるフラグ立ちまくりで、読者としては「おいっ、いい加減気づけよ!」とめちゃくちゃ突っ込みたくなりますw

ジャンヌの一人息子ポールへの溺愛ぶりも強烈で、日本人の感覚でも「ヤバイお母さん」という感じなんだから、日本よりもずっと「子どもを甘やかさない」「親子は距離と節度を持ってきちんと躾けるべし」というフランス社会では、この辺りはもっと「いっちゃってる人」感があるんだろうなあ。

でも、幼少期のポールを中心に、母(ジャンヌ)、祖父、叔母たちがキャッキャしながら子育てに奔走しているところはけっこう和めた。私自身の、両親が孫にキャッキャしているところを思い出してしまって…。

でさあ、物語中盤でフェイドアウトするジャンヌの乳姉妹であり女中のロザリーが終盤になって復活し、ダメ人間になったジャンヌを支える重要な役割を果たしに来るんだけど、これがまたイイ奴なのよ。本では「ジャンヌ様からお給料をいただくなんてとんでもないですよ」みたいにふつうの言葉なんだけど、脳内では「おら、ジャンヌ様からお給料をいただくなんてとんでもねえだ!」と勝手に変換していましたw ジャンヌが「私の人生不幸続き」とメソメソしているときに「食べるものに困って働かなければいけねえわけでも、毎朝六時に起きて一日中働くわけでもねえのに、何を仰るだ!」「子どもだって兵隊に取られる人がいるのに、お坊ちゃまが生きてるだけでもありがてえですだ!」みたいにガツンと説教するところも頼もしくていいw

やっぱり『女の一生』で光ってたのはロザリーとリゾン叔母さんだよねえ。ジャンヌのお母さんの妹である、めっちゃ存在感のないリゾン叔母さんの描写もいいんですよ~。モーパッサンもよくこんなキャラ思いついたよねw