昭和といえば日曜夕方のあの空気

昭和50年代の日曜夕方。

サザエさんが始まると同時に我が家では夕食が始まっていたのでその前の段階だろうか。おばあちゃんと一緒に見る笑点。でも私が印象に残っているのはそのコマーシャルだ。

 

…と書いたところで、料理天国の記憶も一緒に立ち上ってきた。あれは土曜日じゃなかっただろうか。

 

ここで何が昭和なのかというとサントリーのコマーシャルだ。サントリーのコマーシャル…。とはいっても何か鮮明なCMを思い出したかというとそうでもなくて、いま私が思い浮かべているのはお寿司屋さんのような少し高級目なカウンターのお店に出される小さなビールグラスだ。

 

当時の私は子どもだったのでそのような店に連れて行かれると飲み物にジュースを出されるわけだが、大抵は瓶のバヤリースオレンジしかなく、美味しいといえば美味しい、甘すぎて美味しくないといえば美味しくない、少なくともお寿司には合わないだろうというそれを飲んだ。

 

当時の大人向けの、昔からあるようなお店はドリンクの品揃えがやたらと貧弱だった。

 

話はすでに日曜夕方のテレビ番組界隈の話から離れているが、私にとってはこれも「昭和の日曜夕方のあの空気」なのだ。

 

それから昭和といえば、母の元上司兼「心の師」みたいなおじさんだ。このおじさんが私の中の昭和の文化人だ。おじさんは東大を卒業後、思うところがあって観光バスの運転手になった。観光バスのガイドをしていた母や母の同僚たちにも偉そうにすることなく、ガイドさんたちからとても慕われていたそうだ。

 

母は私や父を連れて、横浜郊外に住んでいた退職後のおじさん宅へ遊びにいっていたが、ここのお家や暮らし方が、子どもながらにも色々とこだわりが感じられた。まず、まな板が木の切り株。おじさんの日常着が作務衣。民藝品愛用。思い出していくうちに囲炉裏さえあったような気がして来たが、そこは多分私の創作だろう。

 

私はコロナブックスから出ている『作家の住まい』『作家のおやつ』…などの『作家の〜』シリーズが好きなのだが、これも私が子供のころの「正しい文化的在り方」とか「正しく高級な食卓」みたいな雰囲気や懐かしさを味わいたいからなのだと思う。やたら「正しい」が出てくるのは当時の私が子供だったということでご容赦願いたい。