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『老愚者考』。老賢者より老愚者

スイス人のユング派精神科医、グッゲンビュール・クレイグ氏による著書。

老賢者というのは知恵と経験豊かな老人のことで、ユング派心理学では人間の魂の元型のひとつだとされています。

それを、ユング派精神科医である著者が真っ向から否定。

老人が知力も体力も衰えていくのは当然のことで、「経験からなる知恵」だって、時代にそぐわなくなった古い知識を振りかざすだけ。「老賢者」というのは、そういった衰えに直面する恐怖から目をそらすためにうまれた神話なのではないかと言っています。

老賢者が害として現れている例としては、かつての栄光にしがみつき、自らの老いを認めず、老いからくる衰退をごまかすかのように独善的で虚栄心が強くなる老人だそうで、本書では晩年のシュヴァイツァー博士が例にあげられています。それから、第二次大戦時に現状を見ずに第一次大戦時の経験であれこれ口を挟む参謀老人なんかも例に上げられていました。私はとっさに石原慎太郎氏とか渡辺恒雄氏あたりを思い浮かべました。

で、本書で推しているのは老愚者。

衰えを受け入れボケを受け入れ、もうムリに社会に適応する必要もない。
老愚者は、知や社会のメインストリームから見れば「愚かでこっけいな老人」ですが、視点を反転させれば、社会人としての責任とか親としての義務みたいなことから降りた自由な人間です。
多少ヘンな言動をしても、おかしな行動をとっても「おじいちゃん(おばあちゃん)だから仕方ないよね」と許されます。

ただ、本書を読んで思ったのは、老愚者像って日本では既に受け入れられているのではないかなということです。「稚気に富む老人」という言葉もありますしね。

おそらく、グッゲンビュール氏が生きているスイスの知識人社会は、私たちが住む社会よりも、ずっと老賢者プレッシャーが強いんだろうなとおもいました。

私自身が老人になったときは…老賢者と老愚者のいいとこどりして楽しく暮らしたい!なんて図々しいことを考えています。

ツイキャスでもしゃべりました。
6分くらいです。
http://twitcasting.tv/nasukob/movie/5984659