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『こんにゃくの中の日本史』 こんにゃくを軸にした日本史

 

こんにゃくの中の日本史 (講談社現代新書)

こんにゃくの中の日本史 (講談社現代新書)

 

 よく「歴史の本には支配者とか中央のことしか書いてない」なんて言うけど、その不満を気持ちよく覆してくれるのがこの本!こんにゃくを軸にした歴史なので、主要な登場人物がこんにゃく農家、こんにゃく仲買人、こんにゃく製造業、こんにゃく問屋だからね!まあ、徳川斉昭なんかも出てくるけど、やっぱり主役は前者。

舞台だって江戸でも京都でもなくこんにゃくの産地である水戸だからね!

こんにゃくだけでよくまあこんなに話ができると思うぐらい充実していて面白い。

こんにゃくが実は投機的な作物で、こんにゃく農家は農家であると共に商人のように「いつ売ったら有利か」を考えながら作物を売っていたとか、仲買人もそれに対抗してウソ情報を流して情報戦のようなやり取りをしていたり。これは中島藤右衛門という人物が、こんにゃく芋を切干して粉に轢いてから作る製法を編み出したことでそうなったんだって。生芋をすりつぶす従来の方法だと、ぐずぐずしてると腐っちゃうから作ったらすぐに売らなきゃいけないんだけど、切干状態にすることで「いつ売るか」を農家が決められるようになった。食品という面から見ても、粉にすることで遠方への運搬や保管ができるようになり、生芋時代よりもずっと食べやすい食品になった。こんにゃくはこんにゃく粉1:水9の割合で作れるっていうんだからコスパもいいよね!

こんにゃく芋の値が乱高下するのは、一つの大きな要因として自体が収穫までに3年かかる上に病気に弱いという気難しい作物であることが言える。

で、こんにゃくを粉にする製法が考えられたのは、何もないところからぽっと思いついたのではなく、実はそれまでの砥石を掘り出す産業が関係しているとか、こんにゃく業界が商業的に発達したのはそれまでに水戸で発達していた製紙業からこんなふうに影響されているとか、水戸でこんにゃく作りが栄えたのは水戸藩の勢力争い(改革派はこんにゃく推し、保守派は製紙業推し)がからんでいるとか、そこから維新桜田門外の変にまで話が及んだりと、日本の地方史、産業史、行政史、政治史をこんにゃくを軸に縦横無尽に語りつくしている。

ちなみに、現在のこんにゃく業界はこんにゃくの価格も低値安定して、すっかり斜陽産業になってしまっているそう。外国産の安いこんにゃくが入ってきたせいにしたくなるものの(けれども実は日本で消費されているこんにゃくの割合は1~2割程度だそう)、著者さんによると、業界が斜陽化した最大の要因は、こんにゃく作りの大規模機械導入によって、農家が生産専門になってしまい、昔のように「こんにゃく芋を切干にしてストックしておき、相場を見て売るタイミングを決める」ことができなくなったからだそう。

確かに、こんにゃくって例えばお米のように生活必需食というわけじゃないし、投機的作物としてはちょうどいい気がする(笑)