『ユーミンの罪』酒井順子

ユーミンの罪 (講談社現代新書)

私自身は、ユーミン世代でもないし思い入れは全く無いんだけど、いろいろと「なるほどー」と思う本でした。

一番「なるほどー」と思ったのは、ユーミンは八王子出身だったからこそ、都会への憧れ感とかキラキラ感を描けたのではないか、というところ。私も「ユーミンは10代の頃から六本木や横浜や湘南で遊びまわっていた」というのを聞いて「でも、八王子からそこまで行くのって大変じゃないか…しかも昔だし」といつも不思議だったんですよね、あとそこを突っ込む人も誰もいなかったし。酒井さん曰く、例えばきらびやかな王朝文化を描いた清少納言紫式部も、キラキラのど真ん中にいたお姫様じゃなく、傍流というか二流の人だったからこそ、そういう世界を客観的に描けた、だからユーミンも実はど真ん中ではなく辺境の遊び人だったからそういう視点を持てたのではないかと、ということでした。

あと、嫉妬とか性愛とかいったテーマからドロドロしたものを抜いて、ドライにおしゃれに表現するワザが天才的とかね。ユーミン自身は自立したかっこいい女性のイメージだけど、曲は「助手席感」というか守られている女性が共感するようなもので、だけど旧来の尽くす女性像ではなく、パートナーを積極的に選んでいく女性像ということで、まあ、演歌の世界からだいぶ進化した、自立はしてないんだけどw、まあ、昔よりは少しマシになった過渡期の女性像を描いていた、という解説も「なるほどー」と思いました。

それにしても、バブル期の風俗解説でよく出てくる「バブル前は進学校から東大に行くような男性が一番すごいという価値観があったけど、バブル期あたりからお坊ちゃん大学の付属校上がりで、受験に翻弄されない余裕のある遊び人がモテた」っていうの、これいつもアベシンゾーと取り巻きを思い出してすごく腹が立つ!「お前らが日本をダメにしたんだろ!」って思っちゃって。