小山田容子『ちっちゃな頃からおばちゃんで』

ちっちゃな頃からおばちゃんで(1) (KCデラックス Kiss)

ちっちゃな頃からおばちゃんで(1) (KCデラックス Kiss)

このマンガはtwitterで「面白い」という評判を聞きつけて読み始めました。
とうとう最後の4巻まで読んでしまったのですが、ほんと面白かった!

舞台は冴えない地方都市。
ここで銀行に勤めながら実家住まいしているアラサー女子の淳子さんが主人公。
タイトル通り、子どもの頃からお母さんに間違われるほどおばちゃんぽい見た目で中身もしっかりしている。
実家はレストランをやっていて、休日は手伝ったり、お店が苦しそうだったら自分の貯金からお金を出そうとする。一方、弟は都会で大学生をしていて好き勝手に暮らしている(姉の目からはそう見える)のに、母は弟にめちゃくちゃ甘い。

みたいな家の事情がベースにあって、そこに引きこもりの従兄弟や、淳子の短大時代の一見派手な友人なんかが絡んできます。

コマの運びやテンポが絶妙で、一回読み始めたらどんどん読んじゃう。
だけど、お話自体は日本中のどこにでもある話なの。
それなのに、こんなにおもしろくて良い気分にさせてくれるなんて、なんてすごい作品でしょう。

何か事件が起こっても、何かそれがうまいこと良い方に転がっていく感じとかがとても好きです。あと、淳子のお母さんのおばさんらしい鈍感さと図々しさが面白いんです。そして、その娘からするとイライラするそんなところが、いざ娘が苦境に立たされたときに「肝が据わった強さ」という長所だったことに気がつく辺りもよかったなあ。

小さな地方都市の保守的な感じとか、地元の狭さとかもよくわかる。マンガでもドラマでも物語の舞台って大都会か田舎かのどちらかになりがちだから、こういう中途半端な規模の町のリアル感が新鮮でした。

地上波の連続ドラマは常にネタ不足で困っていると聞きましたが、これなんかどうでしょう。ドラマ化されたらぜひ観たいです。