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「消滅―空の帝国「パンナム」の興亡」を読んで、「古き良き時代に潜む欺瞞性」を考えました

消滅―空の帝国「パンナム」の興亡

消滅―空の帝国「パンナム」の興亡

(今日はいつもと語り口が違います)

パンナムって知ってる?
私だってそんなに知らないよ。
だって1991年1月に破産しちゃったんだから。
でも名前は知ってたし、なんとなくアメリカのフラッグキャリア(その国を代表する航空会社)なのかと思ってたんだけど、私が海外旅行に行き始めた頃にはとっくになくなってたんだよね。

著者はそのパンナムのスチュワーデスだった人で、しかもパンナムの黄金時代に働いていたそう。ちょうどバブルの頃に不動産会社に居合わせたかのような運のよさだよね。
(あ、でも著者さん自身も優秀でいろいろ努力されていた方だったからこそその運に乗れたってことはちゃんと心しておかなきゃね)

この本には、著者さんのスチュワーデス時代の栄光の思い出話、パンナムという会社の歴史と航空業界の話、パンナムにまつわる有名人エピソードと三つに大別されるんだけど、まず私が食いついたのはスチュワーデス時代の栄光の思い出話。

給料が転職前の十倍とか、備品持ち帰り放題とか、世界各国から集まった気のいい同僚たちと楽しくワイワイとか、乗務につく行き帰りのフライトはファーストクラス乗り放題とか、成田までハイヤーとか、そろそろくどくなってきたからやめとくけどうらやましすぎるだろこれ。
ましてや、その頃の日本がまた貧乏だからコントラストが凄まじいんだよね。
そんな感じでちょっと腹立つんだけど、その追体験ができるのは、読んでいて楽しいよ。

ついでに「古き良き時代に潜む欺瞞性」みたいなことも考えちゃったな。
特権階級サイドで懐かしむパンナムの良き時代って、読んでいてもとても楽しいんだけど、それってなんて言うんだろうな、手放しで肯定できることでもないんだよね。
たとえば、当時は限られた人しか海外に行かなかったので、機内は乗客とクルーで和気あいあいとしているんだけど、誰でも飛行機に乗れるようになって大衆化してくると、そういう和気藹々が通じない人が出てくる。私もその様子を淋しく感じながら読んでたんだけど、よく考えたら私はその大衆化されて誰でも飛行機に乗れるようになって乗ってきた人だしね。
(…困ったモンスター客についてはまた別の問題になってくるよね。それとも大衆化の負の側面として考えた方がいいのかな)

兼高かおるさんがパンナムの黄金時代を懐かしむくだりで、「パンナムだけでなくて、世界がすべていい時代でした。飛行機の中のファーストというのはソサエティ(社交)の場だったんです。乗客は皆仲よくなってとにかく楽しい場所だった。今は、隣に座っている人と、何時間も降りるまで口をききませんね。最近ですが一度、きれいなインド人の女性が乗ってきて、砂糖か何か機内サービスで出たものをみんなアタッシュケースに詰め込んでいるのを見て驚いたことがありました。昔のファーストクラスは髪の毛の黒い人が少なかった。最近はほとんどが髪の毛が黒い人です。それにきちんとした格好で乗り込んでくる人が少なくなりました。時代が変わったんでしょうね」
なんかこの兼高かおるさんの述懐に、「古き良き時代に潜む欺瞞性」がいろいろ詰まっている気がする…(^-^;)
(兼高さんを知らない人は「兼高かおる世界の旅」でぐぐってね)

あ、でもね、パンナムというかアメリカの航空会社のサービスでいいなと思ったのは、日本企業ほど上下関係がない感じのところ。サービス提供者としての仮面に自分を押し込めてない分、フレンドリーで融通がきく感じのところ。ただ、日本人で中には「高い金払ってるのにその態度はなんだ!」ってよく思わない人も多いんだって。
朝見たどなたかのブログで「ファーストクラスに乗る日本人で、狂ったように威張る人がよくいる」という趣旨のことが書かれていたんだけど、URLを見失ってしまった…


企業経営とか航空業界に関心のある人には、そのあたりもたっぷり書いてあるので面白いと思うよ。
パンナムの栄光と没落の様子は、「企業が成功する最大の要因は運である」って言葉を思い出しちゃった。