『家族写真をめぐる私たちの歴史: 在日朝鮮人・被差別部落・アイヌ・沖縄・外国人女性』

 

家族写真をめぐる私たちの歴史: 在日朝鮮人・被差別部落・アイヌ・沖縄・外国人女性

家族写真をめぐる私たちの歴史: 在日朝鮮人・被差別部落・アイヌ・沖縄・外国人女性

 

 在日朝鮮人女性である皇甫康子さんが在日女性のグループ「ミリネ」のメンバーに呼びかけ、お互いの家族写真を持ち寄り語り合ったことが、本書が生まれた始まり。

朝鮮半島被差別部落アイヌ、沖縄、フィリピン、スリランカベトナムにルーツを持つ女性たち24人が家族写真を持ち寄り、そこからライフヒストリーや家族との関わりなどを語ります。

読んでいて感動もしたし、涙ぐむときもあったし、しみじみとした気持ちにもなりました。でもこの本はそういった感動や気持ちを消費するだけのものではありません。この社会でマジョリティとして生きる私は、本書を読んで「すごくいい本だった、感動した」というだけではいけない、晴れ着であるチマチョゴリを着るのに勇気がいる社会、誰かに傷つけられるのではないかと緊張する社会ではいけない、そう強く思いました。

現在は昔みたいな差別は無くなった社会だと言う人もいますが(あの在特会の存在を知っていてもなおそういう認識の人がいるんですよ!)、出自や差別にまつわることは祖父母から親、子、という縦構造で伝わり、結婚するときにいきなり相手方の親の反対などで露呈する、という感じで、今も多くの人を苦しめているのではと思います。

自分自身についても「私は差別意識などない」と思っていても、単に無知で無自覚でそう言ってるだけのことがあるんですよね。自分でも注意深くありたいです。

それから、冒頭にあげた、本書を読んで感動したり涙ぐんだりしたところ。そうなんです。そういう魅力もこの本にあるのです。語り手の方の祖父母、親世代の困難な人生、語り手の方たちの世代との衝突、語り手の方たちが大人になって親たちを理解したり和解したりするところ。そんな、親子の物語、家族の物語ということでも、とても心を動かされました。